浅井リョウの『正欲』を読んだ。
これは、なかなかに「しんどい」作品だ。

多様性が叫ばれるこの時代、多様性を拒絶することは当然社会的に許されなくなってきている。
本作は、想像外の多様性があることを想定せず「決まった枠内に収まる多様性」だけが許容される世界を提示する。ただし、それにすらおさまらない想像外の多様性があることも指摘するのである。
そして、本作は「多様性を許容しないこと」だけではなく、「想像外の多様性に気づいていない人が多様性を許容すること」の悪も指摘するのである。
「想像外のものがあること」に気づくのは想像外のため当然難しく、自分もその可能性に当てはまっていることに怯えながら読み進めることになり、「しんどい」作品となるのである。
一方で、「想像外の多様性」側で悩んでいる人も本書はある意味、心の支えにはなるかもしれない(救いにはならないと思うが)。
心して読む必要があるが、考えさせられながら読まされ、万人にお勧めできる作品と言える。
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