『おもろい以外いらんねん』の感想:おすすめ度3.0

大前粟生の『おもろい以外いらんねん』を読んだ。

お笑いコンビを組んだタッキーとユウキ、芸人にならなかった俺。微妙な友情と人生をどう生きるかを少しノスタルジックに描いた3人組の10年間。

お笑い芸人の文芸小説と言えば又吉直樹の『火花』を思い浮かべる人も多いのではないでしょうか。

『火花』が芸人自体の生きざまを描いた物語とすれば、こちらは芸人という人生を選んだ友人と、その世界線とすれ違ってしまった自分の出会いと別れ、そして再会を描く友情物語であり、異なるテーマである。

本作ではそのような微妙な男同士の嫉妬心、仲間意識、そして優越感を鮮やかに描くことで、ちょっと古傷がじくじくするような感覚で読み進めることができる。

ただし、「芸人」をテーマにしている点で、どうしても「お笑い」が面白いのか、という視点が入ってきて、それが小説というメディアではどうも伝わらず、ずっと気になってなかなか作品に入り込めなかった。

このような友情のすれ違いをテーマにするなら、「お笑い」を主軸に持ってこなくても、もっとストレートに描けたのではないか、と思う。

文学的な小説としては心理描写はうまいと思うので、友情ものが好きな人にはおすすめ。

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